第3部 003話
「店には、一組ずつしか入れてはならない」
「なぜなら……」
「『俺』の抑えがきかなくなるからだ」
ビシャ!!!!
f は、ちぎれた足を雑巾のように絞り、
血を撒き散らした。
「たしか……この身体と、
その女はミヅキの連れだよな……」
少年らしからぬ目付きで、
ゆっくりと見渡すと、舌なめずりをする。
オトネは、自身を取り押さえている男達にたいする恐怖よりも、 f の表情に戦慄した。
「おい!!」
「こいつ、ガキのくせにダーザインだ!!」
「油断するな!!」
ビィキィギギギギギ
アレーテウェイン!!!
「真理化は、ミヅキだけの能力と思うなよ」
男達の瞳が、深紅に光る。
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「レヴィン……どうだ?」
レヴィンは、足元の石畳を杖で小突くと、音の響きに耳を澄ます。
「もう、あと2歩ほど北側へ」
ミヅキは、レヴィンの指示通りに動くと、踵を鳴らす。
「そう! そのあたりだ」
「わかった」
ミヅキは、掌外を裂くと、血液が石に滴る。
石はミヅキの血を吸い込み、赤みを帯びた。
二人は、同じ様な作業を何度か続けると、ふっと、レヴィンが顔を空に向ける。
「ミヅキ……雨だ」
「今日は、ここまでだな」
レヴィンは、ミヅキに笑顔をむける。
その顔は、すでにミヅキの歳を遥かに越えて、陰を濃いものにしている。
「ミヅキ……ここからなら、一人で帰れる」
ミヅキは、少しためらいの表情をみせたが、レヴィンの気遣いにあやかる事にした。
「悪いな……」
「すぐに追い付く」
「ごゆっくり」
レヴィンとミヅキは、それぞれの方向に歩きだした。
この距離を一人で帰るのは始めてだが、杖の響きと、ダストの揺らめきで歩くのに、何の不都合もなくなっていた。
見えないことで、視えることが増えた。
この世界は”概念”が支配している。思想が言葉となり、音となり……形となり……光となりうる。
突然、レヴィンは、目前に闇を視た。
恐ろしく、濃度の高まったダストから現れたのは………黒い犬と……白い女。
「こんにちは、レヴィンの一族の末裔さん」
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