第二部 005話
ゴフっ………
内蔵を損傷したのか、ドス黒い血を吐き出しながら、レヴィンが立ち上がる。
「すまないな………力不足で」
「f………君…一人を救うことも
出来ないとは」
「フッ………」
「どうにもならない時に、
どうしようもない事を
思い出すもんだな………」
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母は、エクソシストの
家系だった……。
ダストを悪霊と捉えていた
時代の生き残りだ……。
ダストは闇に集約し、
光に拡散する。
その性質上、それを操ろうとする者は、いぶかしがられ、畏れられた。
彼女は、独学で術をみがいたが、その能力は不完全だった。
だから、夜明けを利用する。
結晶を使って少しずつダストを引き剥がす………。
5歳のレヴィンにできた事。
母の合図に合わせて、ブラインドを開く。
………美しい朝日が部屋に射し込み、
ダストは散開する。
…………はずだった。
ダストが剥がれる
この瞬間。
レヴィンはいつものように、東の窓際に立ち、ブラインドの紐を引いた。
光は……
射し込まなかった……。
朝はこなかった………。
引き剥がされたダストは、
不安定な個体に融合しようとする。
………この密室では
……身体が幼い少年のレヴィン。
「インディアヴェルトザイン
(In-der-Welt-sein)」
ここに存在は世界する 。
ダストは結晶に吸収された。
エクソシストとしては、不完全だった……。
無理な法術は本人にも
負担が大きい………。
母は………死んだ。
<俺は、許さない>
<……ダーザインを>
<………無力な自分を>
<必ず、手にいれる>
<ダーザインに勝るチカラを………>
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忌まわしくブレンドされた化け物は、その腕の一降りで、レヴィンを紙屑のように投げ飛ばす。
バシン!
狂気をふくんだその表情は、命を潰す愉悦にひたっている。
壁に叩きつけられながらも、レヴィンは必死で意識を保つ。
<まだ……終わりじゃない…>
<イン……… >
<……ディアヴ……>
<この化物ごと、この結晶に…… >
<俺の命を使う………>
レヴィンの水晶に命を注ぐ、その瞬間。
ドォォォン!!!!!!
その時、建物に地震のごとき衝撃がはしる。
バ! ギィ! ン!!!
凄まじい響きと共に、
壁が崩れ落ちる……。
砂埃の奥から現れた深紅の瞳に、圧倒的な破壊力を得たはずの化け物にある感情を植え付けた…………
恐怖だ。
レヴィンの姿を確認したミヅキが、犬歯を尖らせた口を開く。
「この犬が………」
「できてんだろな…………覚悟は! 」