AZURELYTONE 第4部 003話

ズゥゥゥゥン……

建物の倒壊は、かろうじて免れたが、店の内部は壊滅した。

硝煙とタバコ……そして、木材と肉の焼ける臭いがたちこめる。

バコッ

分厚い扉を、内側から開くと、サヨは恐る恐る冷蔵庫から出た。

室内は、煙が充満して視界は、僅しかない。

目の前には、焼け焦げた塊が重なり合っている。

なぜ、アルが自分を匿って死んだのかよくわからないが、利用できる者は、躊躇わず利用する……そうしなければ、生き残れない。

サヨは、そういう世界を生き抜いてきた。
……20年もの間。

「私は……もどれたの?……人間に………?」

ダーザインは、不死性を分け与え、眷属をつくることができる。ダーザインの不死性を得るが、従属関係を強制される。

ダーザインの不死性がなくなれば、眷属は人間にもどる。

それは、特権の喪失なのか、自由の回復なのか……。

サヨは20年前、少女のまま不死性を与えられ、クロウズに支配されてきた。

稀族には、齢が30に満たないものを、眷属に迎えてはならないという掟がある。

身体は元より、精神が未成熟な状態で、永遠を手にしたものは、狂気に犯される果てを免れる事はない。

10歳でクロウズに拾われたサヨは、当初、自身を幸運だと思った。
毎日の食事に困る事もなく、クロウズに気にいられれば、大人になった時、永遠の命を分けてもらえる……。

しかし……。
サヤが、不死を与えられたのは、髪が伸びきると同時の事だった。

クロウズは、掟を守るような人格からはかけ離れていた。

サヤは、子供のまま、クロウズの奴隷として永遠を生きなければならなかった……。

だから、サヤは、逃げた……20年の苦しみと、不死の秘密を奪って……。

そして

今、自由を……

ガシッ!

足首に黒い針が、食い込む。

「くぅっ」

いつの間にか、焼け焦げたクロウズの塊が足元に移動していた。

ドクンっ。

「あっくっ」

ドクン。

足に突き刺さったクロウズの指から、サヨの血液が、搾り取られる。

「見つけたぞ……私の、大切な非常食よ……」

クロウズは、サヨの体内に自身の血液を流し込み、培養させていたのだ。

「……あ……あっ……」

足首に差し込まれた指から血が吸いとられる。

「くっくっ……ぐっ」

「実に………ヤバかった………ぞ……ここまで粉々にされたのは、初めてだ………ぜ」

「アルの肉片がなければ………くっくっ……最期の親孝行だな………」

サヨは、支配される恐怖で身体が硬直する。

(……自分の子供の身体も取り込むなんて……狂って……る)

「そして、やはりお前の血が私に適している」

ドクンっ。

彼女は、20年もの間、クロウズに血を絞られ続けていた。

クロウズの身体に、精気が戻る。

ドガっ!!!!!!!!!!

「やめろ!!!!!!!!」

「その娘を離せ!」

「その娘に手を出せば、スーツケースの中身は、この場で粉々にする」

ミヅキの鬼気に、クロウズは動きを止めざるを得なかった。

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