『方舟』
言葉も満足に理解できないような、さまざまな人種、性別、年令のごった返した人混みの中にいた。
動物、植物、虫にまみれながら、港に降り立つ。
振り替えると、豪華客船を何百倍にもしたような、巨大な船が港の一部を破壊しながら停泊している。
(よくもこんなにデカイ船を操作できたな……)
どうやら、僕はこのドデカイ船の操縦士のひとりらしい………。
陸の方を見ると、美しく煌めく街並み。
見たこともないような服をきこんだ人々が遠巻きに見ている。
僕たちは、大航海の果て、新大陸ではなく、遥か未来にたどり着いたのだ。
これだけの歴史的価値のある巨大な船。
貴重な人々や、古代の動植物を未来へ届けた。
きっと、この功績は讃えられ、
船を中心に我々の冒険を語る
博物館ができる事だろう。
数週間後、僕らに理解しやすいように、
預金通帳の形をした身分証に
振り込まれた金額は……
2438円
この時代、時空を超える事など、
めずらしくもなく、
建造物も素材ごと時空を超えてるため、
歴史的価値は皆無との事。
港を破壊した費用と、衛生費をさしひいて、
借金にならなくて
まだよかったね…………だと。
(…………あの船、
写メとっといたらよかったな……)
そして、目が覚めた。