世界は満ちていた。
なにもかも。
すべてがうまくいく。
一度でも……
一度でも、そんな事を思ってしまうと、心は戻れなくなる。
「大丈夫」
「心配するな」
「きっと、いつかは」
「きっと、いつかは、僕も……」
仲良くなった少年は、10年後遊びにいったら、青年になっていった。
「人によって、成長の仕方が違うんだよ」
父は、そう言った。
「その話はしないで」
母は、そう言った。
おかしいと思ったのは、妹が生まれてからだ。
妹は、わずか5年で、15年かけて伸びた僕の身長を越えた。
妹が特別成長が早かった訳ではない。
僕が成長しない事が異常だったんだ。
そして、それは妹の成長として、両親の責任でもないんだということが証明されたのだ。
その時、僕は、生まれてはじめて自身の能力を使ったんだ。
父、クルトの国では、ダストの存在は悪魔として捉えられていた。
クルトは、エクソシストと呼ばれる人間にとりつく「悪魔」とよばれる存在を退ける仕事をしていた。
彼は、「悪魔を退ける術」を身につけていたが、その「悪魔」なるモノを滅ぼす術を長年において探していた。
そして、あるジプシーと遭遇する。
ジプシーは、サーカス団を営んでおり、様々な国を廻っていた。
サーカス団は、どの国でも歓迎され、同時に感謝される存在であった。
なぜなら、街にとりつく「悪魔(ダスト)」を滅ぼして去っていくからである。
クルトは、サーカス団の活動に参加することになる。
卓越した曲芸の数々もさることながら、公演の最終で奏でられる歌声とメロディー。
その歌、「アズレリイトオン」によって、悪魔(ダスト)が歌い手に吸収されるのだ……。
ダストは、光に拡散して闇に集結する。
そして、密度の高い結晶内に乱反射させて閉じ込めることも可能となる。
それは、クルトも扱っている技術だ。
たが、その歌い手が吸収したあと、どうやって悪魔(ダスト)を滅ぼすのか……。
クルトは、絶望を知る。