第二部 008話
扉を開くと、さらにダストの密度は高くなり、キャリアの深い f ですら、中を伺い知る事が
できない。
「…………」
「………何か?」
「歌?」
部屋の奥から、女性の歌声が聴こえる……。
「何か見えるか?」
ミヅキが f に問いかける。
その姿は、いつもの彼に戻っていた。
「ダストが濃すぎて………」
「僕が、吸収する」
「 f……無理しなくていいんだ」
「大丈夫」
<自分がついてきたばっかりに、
レヴィンはボロボロになりながら
僕を守らなきゃいけなくなった………>
<僕が、出来る事をしなきゃ……>
インディアヴェルトザイン
バシュュュゥゥウゥ!
ダストが f に吸い込まれていく。
同時に、部屋の内部が鮮明になった。
独房のようなコンクリートむき出しの外壁に
部屋の奥に、トイレ、パイプベッド………
ひとつだけ豪華な革貼りの椅子には、
人が座っている。
その異様な椅子には、鎖がつながれている。
…………その鎖にはひとりの少女が。
少女は、ヘッドギアをつけられ、肘から腕を
挙げられないように上半身を固定されている。
ヘッドギアに目と耳が塞がれているためか、
少女はダストが晴れた事どころか、
三人の入室に気が付かず、そわそわと室内を
彷徨く。
その唇からは、絶え間なくハミングが
紡がれており、フッと何かを思い出したのか、手探りで椅子にすわると、歌を歌い始めた。
グワアアァァ
その周辺にダストが集まり出す。
「……… f 」
「彼女の “歌” がダストを集めている」
意識を失いかけていたレヴィンが、最後の力を振り絞って叫ぶ。
「ヘッドギアが彼女を操っている!!」
f は、ダストが少女の唇に吸い込まれる瞬間、そのヘッドギアを剥ぎとった。
「もう やめて!!!」
「!!!!!!!!!!」
一瞬にして、視界が開けた少女は、硬直して
三人を凝視する。
彼女の歌が止まると同時に、ダストの流れが………………
停まった。
歌が止まると、咎められると思ったのか、
少女は、あわててた。
「あっ………えっ………あ」
f は、人差し指を唇にあて音を制した。
「し~」
レヴィンとミヅキを振り替えると、二人は
頷く……三人は理解した。
この少女は利用されていたのだ……と。
「………大丈夫かい?」
「もう………大丈夫だよ」
f は、怖がらせないように、
優しく声をかけた。
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