第一部 009話

ダーザイン(Dasein)の不死性は、
ダスト(Dast)の融合によって
個体差が生じる。

例えば、
ダストの結晶を飲み込むとする……

軽易なダーザイン(不死者)だ。
ただ……身体のどこが不死になったのか
試してみないと確認しようがない……。

吐き出すか、排出すれば人間に戻る。

もって三日間の不死だ……
僅か三日の不死を得るのに
リスクの方が高いといえる……。

ダストをどのように肉体に保つ?

例えば、
身体に埋め込むとする……

傷が塞がってから、不死性が現れればいいが………下手をすると永遠の傷の苦しみが続く事になる。

永遠に生きるという事は、
苦しみも永遠に続くということ……

永遠の苦しみは、精神と肉体の支配を逆転させる。

その生命の精神のカタチに肉体が変質するのだ。

それが、アレーテウェイン(真理化)

………人ではなくなる。

いつのまに近づいたのか、ミヅキが男の耳元で囁いた。

「今からあんたを
解体する…… 」

バシ!!

男は、引きちぎれた腕を、ムチのように

叩き付ける!

ミヅキは背後に回り込み、こめかみに肘を

突き刺す。

同時に、硬質化し刃物となった血液が、

射し込まれる。

「ぐっ」

さらに、ミヅキの血液は紐のように男に絡まり、身動きを封じる。

ガン!!!

足払いをかわすすべはなかった。

ギンっ

倒れると同時

拳が顔面に叩き込まれる。

ドッ

衝撃で石畳が砕ける。

ゴン

一撃、また一撃

ミヅキは拳を止めない。

「ぅおぉぉぉらぁ!!!!!」

バリバリバリバリ

高質化した男の皮膚は、無惨に剥がされていく。

「ぐああぁあっ」

ザギュ!

ザグ!

バギン!

ザッ

「ォォオオオッ!!」

(俺のブレンド(能力)は血液

血液を硬質化して切り裂く

しかし、極度の硬質化は、

脳の機能も限定させる…………)

(もう………容赦はできないぜ……… )

月明かりの下、身体を引き裂く音が響きわたる…………。

バギ!………………

ブチブチブチ…………

<う……俺は何をしてるんだ?…>

<なんのために、こんな事を……… >

<身体が引き裂かれている……なぜ?>

<俺は、なんで、こんな悪魔と闘っているんだ? >

薄れゆく意識のなかで、あの時の選択がよみがえる…………。

「女房は事故で………死んだ」

「医者の診断では、俺の命も2ヶ月もまない……」

「このままでは、娘を育てる事ができないんだ……助けてくれ………助けてください」

男がひざま付いて懇願するのは、

ひとりの女性。

あどけなさの残る顔は

どこか浮世離れしていて、

男の声が聴こえているのかも判断がつかない。

なによりその「白さ」。

髪や肌だけに及ばず、内臓に至るまで脱色したかのように、脱け殻のように「白い」。

その傍らには、彼女の色を全て吸収したかのような、漆黒の犬がねそべっている。

「ダーザインは生者の刻を止める技術」

真紅に艶めく唇が語りだす。

「あなたがいくら願っても、
亡くなった奥さまを甦らせる事は
できないの…… 」

「でも……私を訪ねてきたのも
何かの巡り合わせ」

「不死にしてあげる」

「病に苦しむあなたか……」

「その幼い少女のどちらかを…… 」

「選びなさい………… 」

そして、男はダーザインになった……。

男は死に際の病に犯されながら、
娘を育てた……。

しかし、死に近い苦しみを味わい続ける事に、精神は耐えられはしない…… 。

崩壊していく精神をひきずり必死にもがいたが、安定した仕事ができるはずもなく。

男は不死の身体にたより、人を襲い金品を得るようになった……。

娘は成長するにつれて、男の異常な行動に気がつきはじめる……。

そして……

男が自分の事を、娘なのか、妻なのか、母なのか認識できなくなったとき……

彼女の心も限界に達した………。

老婆となった娘は、男を連れ、レヴィンの店「ブラックボックス」に通うようになった。

しかし、男のダストを完全に祓う術はなかった……)。

そして、アズレリイトオンを選曲したのだ。

ミヅキは、血液に宿る人間の願望を感知できる。そして、それを叶える。

『自由が欲しい』

たとえそれが、残酷な結末をむかえる事になるとしても……。

「ふ~っ」

「あんたと俺の血管を繋いだ」

「身動きひとつできないはずだ」

「このまま眠るように死なせてやる」

……娘を…た…の…む。

「……………」

ミヅキの硝子玉のように変化した眼球に、僅かな感情が波打つ。

「心配ない……あなたは娘を
立派に育て上げた……」

「じゃあな………」

「待って!!!!」

「その人を殺めてはだめだ!!!」

f は、その幼い外見からは想像もできない響きを放った。

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