ッッ………プチン
ミヅキの中で、何かが途切れた……。
………こいつは………
(こいつは、今、殺す………首をとばす)
余命を凝縮した身体速度に、一瞬、クロウズの想定を上回った。
ミヅキは、手首に縛り付けたスーツケースをクロウズの側頭部に 叩きつける。
ガツ!!
頸骨が砕けたクロウズの頭が、不自然にぶら下がる。
(……千切れてない!?)
(………っもう一撃)
手首を返えして、スーツケースを振りかぶった…!!!
ぶら下がる頭がニヤリと笑う。
「詰めがあまいんだよ」
ミヅキが振りかぶったスーツケースが、くくりつけた拳ごと吹き飛ぶ。
体勢を崩したミヅキ、
ズガッ!!!!!!!
クロウズの腕が、ミヅキの胸を貫通した。
「ゴブゥォォ」
潰れた心臓から、絞られた血が、口から溢れだした。
「人間ごときが、私に勝てるとでも思ったのか……」
ミヅキは、遠ざかる意識で微かに笑う。

「カハッ……敵うとは、思ってなかった………さ」
「…………が」
「これで、あんたの望みも……終わりさ……」
「大事なものを……」
「壊される思いを……」
ミヅキは絶命した。
そのちぎれたコートの懐から、粉々になった狗のミイラがこぼれ落ちた。
「貴様!!!」
「……………ミヅキよ」
クロウズは、崩れた狗のミイラを拾い集めた。
「私でも、粉々に分断された肉体は、何がで代用しなければ死に至る」
分断された胴がみるみる繋がり始める。
「これが……完全なる不死」
「唯一無二の、我々の原始の生物」
「クックッ…………」
「我々は………この街は……この狗の血をしぼりだし、すすりあって、不死を保つ畜生なのだ……」
「死ねるお前は、幸せなのかもな……」
クロウズは、狗をもち立ち上がると、店を後にした。
鎮まりかえった瓦礫の中
5つを見ろ
4つに触れろ
3つを聞け
2つを嗅げ
1つを喰らえ
ドクン!!!!
潰れた心臓が再生。
クロウズの聴覚は、微かに心音を聞き取ったが、ミヅキには”不死の能力を与えていない”という確信が、判断を遅らせた。
ドクン!
二度目の心音に、クロウズは、反射的に手刀を振り返り様に放った。
誰もいない……気のせいか………。
いや……ミヅキの死体が……ない。
次の瞬間、さらに背後からクロウズの頭が吹き飛び、上半身が粉々に砕けた。
ダーザイン・アレーテウェィン

ミヅキの深紅の輝きを放った。