第一部 005話



カフェ「ブラックボックス」は、
少し暗いけど、落ち着いた印象の店だった。


「じゃあ 座ってまってようか?」


レヴィンは、なれた様子で
僕を奥のテーブルに案内し
向かいに座った。

「すこし、これを視ててくれるかい?」


レヴィンは、碧い玉をかざした。

「この水晶球には高濃度の
ダスト(Dast)が詰まっている」


「色が碧(あお)から紅(あか)に
変わりはじめた…」

「……君は ダーザイン(Dasein)だね」


店には他にお客さんもいないからか、

レヴィンの静かな声もひびきわたる。

「はい」

黒く染められた艶のよいテーブルを

見つめながら少年は答えた。


「僕のブレンド(能力)は洗脳にちかい」

「あなた達に仲間と思わせる
ブレンド(能力)をつかいました」



レヴィンは少年の瞳をまっすぐに見つめる。

「素直だね」

「さっきの違和感」


「なにかあると……予想はしていたけど」


「まさかそんな能力があるのか?」

レヴィンは怒るどころか、少年が能力を

使わなければならなかった事態にしてしまったことを反省している。


レヴィンはそういう性格であった。

レヴィンは少年に優しく語りかけた。

「ダーザイン(不死者)になると
いう事は、自身の刻(とき)を
止めるという事……」


「少年の状態で刻(とき)を
止めたいと願うだろうか…?」


「もしかして……君は何者かに…」


レヴィンは少年の心に寄り添うように質問を加えた。

「すみません…なにも思い出せない…」

「なぜさまよっていたのか…」

「自分は誰なのか……」

「名前も…f……fu…?」

彼は少年をこの場に連れてきた本題を

語りはじめた。


「俺はダーザインではないから
ブレンド(能力)はないが」

「スタイル(術)を持っている」

「記憶を戻すことはできないが
君のダストを祓う事が
出来るかもしれない……」




「おい 待て!」

「今、ダスト(Dast)を祓ったら
ダーザインの記憶も跳ぶぜ」

「記憶のない状態で無理すると
意識すらなくなるかもな…」

「……それより」


「できたぜ……スープ」

「……あぁ すまない」

「話を急ぎすぎたかな?」

「え…? 」

「スープをご馳走する約束だったな」

レヴィンはいたずらっぽく
ニヤリと笑った…。

「とりあえず食えよ」

「なにをどうするかは
その後だ」

「え…?なぜ……? あなたが?」

「それに…」

「僕……お金もってないんです」

「あぁ 気にしないでいいよ」


「ここは俺たちの店だから」

少年fは、二人の顔を代わる代わる見た。

そして、震える手でスプーンを手にとった。


「……おいしい」


スープは温かく、
僕の体に染み渡っていく…。


無心になって食べる間、
レヴィンはなにも言わず、
優しい目で見つめていた。


ミヅキは、静かに席をはなれた。






漆黒に塗りつぶされた部屋は、
ミヅキ以外の入室をゆるさない。



ベットに腰をかけながら、壁をみつめる。


ミヅキが呟くと、闇が応えた。



いや…壁の染みが顔の陰影になり、
口元が動き出した。


<違う……あの女のモノではない>

<というより……別の種だ…>



「あの子供は食事に手をつけた…」

「新陳代謝をしている」

「それは、身体が成長するということ」


<しかし、見たままの歳ではないな>


<もしかしたらお前より歳上かもな>



「刻(とき)が止まっていない
ダーザイン(不死者)?」



「別の種か……?」


<……もし、あのガキがいった
洗脳できるブレンド(能力)が
本当だとすると、奴の
ダストのキャリア(闇の深さ)
は相当だな>


<……グフフっ 喰ってもいいか?>


<……あっ まて……冗談!!!>



ガン !!!!




<ぐっ ……ヒデェ…>

<顔面もろだぞ……くっ>




「様子をみる……手をだすなよ」


言い捨てると、
ミヅキは部屋を後にした。





【第一部 006話へ】







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