第1部 003話
「止まれ!!!!」
「それ以上近づくと、このガキを殺す 」
その記憶のシーンでは、
僕は男に羽交い締めにされ、銃口を
眉間に押し付けられていた……。
「おい?…………なんのつもりだ?」
青年は落ち着いた声で諭す。
「先に絡んできたのは
あんたらの方だろう?」
「通りすがりの子供が
人質になるとでも……?」
しかし、仲間を全て一瞬で喪った男に
冷静な判断力はすでに失われている。
「ぅっ……うるさい!」
「ボスから受け取ったモノを
ょ…よこせ!!」
青年が訝しげに、かたちのよい眉をよせた。
「おまえ……ザイン(眠れぬ人間)
つまり、不死者ではない?」
「ダーザイン(不死者)なら
人質なんて発想はないからな…」
「……まぁいい」
青年は、握りしめていたものを、
男に向かって放り投げた。
「ほらっ!!」
「これだよ 」
血にまみれた指環が宙を舞う。
血飛沫が男と僕に降りかかる。
「さっき 見せたと思うが…」
「俺のブレンド(能力)は血液の支配…だ」
「硬質化して武器にもできる」
「そして………」
片手は僕を……片手は銃を……
男の顔は血液の飛沫を振り払うことができなかった………血液は意志があるかのように、男の目……耳……口から内部に入り込む。
「たとえそれが
飛沫であったとしても……」
「顔にかかった血液は
その体内に侵入し……」
「……え?」
男が血の侵入に気がついた時には、
すでに手遅れだった。
「総てが俺の支配をうける!!」
ミヅキの手袋が朱に滲みだす……。
メキメキ。メキメキメキメキッ。
男が最後に聞いたのは、自身の脳が裂ける響きだった………。
「脳内の血を
残らず吹き出して死ね!!」
「……鬼ごっこ終了だな。 」
バシン!!!!!
男の頭は吹き飛んだ。
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Fが、ミヅキと遭遇する前日……。
その館には、複数の男達が倒れていた。
中央に位置する豪華な装飾に彩られた部屋は見る陰もなく壊滅しているが、その中央に置かれたソファーに女が座り、その傍らに犬がうずくまっている。
女は全裸……いや、その身体に服であっただろう生地が僅かに絡みついている。
彼女は、ダーザイン(不死者)である。
しかし、床に倒れている男達もダーザイン(不死者)だ。彼女が勝利したのは明白だが、その衣装までも再生する余裕はさすがになかった。
しかし、彼女に恥じる様子は全くない、その髪から肌、全てにおいての輝くような白さは、神々しくもあった。
「……で、あなた達のボスは何処よ?」
傷口を抑えながら直立した男は、痛みを堪えながら応えた。
「いない……極夜から、その姿はお隠れになっている」
「では、この組織は、今から私がいただくわ……いいわね」
力付くということだ……しかし、館の男達は、トドメをさされていない。
従うなら助かる……そういうことだ。
「戦闘の最中、窓から落ちた男がいたわね…探しなさい」
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