『家』
「こんにちは」
玄関で庭いじりをしている主人に挨拶をして、家の中に入る。
昭和の中頃に建てられた家だろうか、広めの間取りにところ狭しと様々な物が積み重ねられている。
僕たち以外にも、数人の人達が家の中をうろつき、あれこれと物色している。
作業服の男性……。
めかしこんで慌てた風の女性……。
座り込んで将棋を指し始めたおじさん達………。
どうやら、ここは民家を利用したリサイクル店みたいだ。
友人は、
「今日はこれいただきます」
と独り言のように呟いて、
懐かしいPOPソングのCDを手にとった。
替わりに、ポケットから海外のコインと、
帽子を並べて置いた。
そうだ。
ここは、お金の支払いではなくて、
物々交換をする店なんだ。
なんとなく納得したが、
自分が何を探してたのかを思い出せない。
友人が、一枚の写真をもってきて僕に見せた。
暑苦しく伸ばし放題の髪に、分厚い眼鏡。
写真が苦手なのか、うつむき加減にはにかんでいる。
…………僕だ。
突然、僕は自分の名前を
思い出せない事に気がついた。
そうだ。
以前、僕は、自分の過去と交換したのだ。
…………一体、なにと?
そして、目が覚めた。

