第3部 009話
「なに考えてるの?」
「こいつは……クロウズは、グズ野郎よ」
「ちがう………その男の子は f なの」
「無理よ……この子供の心は
クロウズに喰われている」
「そんな……」
クロウズ……fの小さな頭をくわえた犬が、
顎に力を込める。
「だめよ!!」
「やめて!!……やめないと」
オトネが引き金にかけた指をひきしぼる。
「……………」
「………」
「……オッケーわかったわ」
「あなたが、私と来るなら止めをさすのは、
やめてあげる」
銃口を向けているのはオトネなのに、いつの間にか主導権は、サヨに移っている。
「私も……同行しよう」
「了承してもらうぞ……サヨ」
リボルバーにそっと手をあて、オトネの肩を
抱いたのは、レヴィンであった。

レヴィンが来てくれた安堵と、彼でも敵う相手ではない事を悟ったオトネは、レヴィンに胸を当てて泣き崩れた。
「さあ……いくわよ」
サヨのアルカイックスマイルに、僅かに陰りが灯る。
<5人とも失うなんて計算外……ミヅキが帰るまでにここを立ち去らないとね……>
・・・・・
「必ず、目覚めさせる」
隠れ家の扉を開いた瞬間、ミヅキは異変に気がついた。

石畳に染み込ませた血液は、目に見えない超極細の血管となって、ミヅキに情報を与える。
店で、何かが起こっている。
「クロウズが暴走したか!?」
ミヅキの身体に、無数の紅い針が突き出る。
「!!!!」
針は、全身のトリガーポイント(経絡)を貫きミヅキの能力は『加速』した。
ミヅキは地面を蹴る。
その跳躍は、一歩目に10メートル、二歩目に15メートルを越えた。
・・・・・
ハイヤーのクラシックな扉をしめ、二人の気配を完全に消すと、サヨは上空を見上げた。
猛烈な勢いで、ミヅキが迫ってくる。
その視線は、すでにサヨを捉えている。
「ふふ……なかなかブレンド(能力)を使いこなしてるじゃない……」
「……でも」
サヨは、指を鳴らした。
ドン ドン ドン ドン ドン
店から火柱があがる。
クロウズに取り込まれた男達が自爆したのだ。
「さあ……どうする?」

ミヅキは、サヨの目の前紙一重まで顔を近づけると、踵をかえして店に飛び込んだ!!
・・・・・

<……ぐっ>
<僕は……いったい……身体を>
<くっ………しぶとい小僧だな……この身体は俺のだ……主導権をよこせ!>
ドン!! ドン!! ドン!! ドン!! ドン!!
立て続けに火柱が起こる。
<ぐっ!!!! なんて女だ!>
< 仲間を自爆させやがった!!>
<ぐわぁぁ!!>
僅かに身体の主導権が f に戻る。
「嫌だ……この身体は、僕のだ……おまえがでていけ!!」
きっと、この人の力には敵わない……僕にできる事……これしかない。
『フラッシュバッグ!!』
店の記憶が f になだれ込んだ。
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