勇者の花

ある北の国……。

王様は、一人の王子に語りかけました。

「山々を彩る花々を開拓した技量は見事であった」
「それは、他国やドラゴン共も、我が国との境を明確にするものにもなる」
「〘花の意味〙を貫いてみせよ」

 東の王子は、国の四方の山々に咲く花道を巡回し、仲間達と剣士としての修業も重ねた。

 新しい任を授かったが、その心は、挫折感で一杯でした。

 王者としても、賢者としても、二人の王子には敵わず、ひたすらに剣の腕をみがき、挫折の象徴ともいえる花を、見守る日々が過ぎる。

 10年後……。

 ある日、いつものように花路を歩いていると、その一体が踏み荒らされている……人ではない。

 この足跡は……ドラゴン。

 東の王子は、即座に仲間たちに、街への伝令と避難を命じました。

ドラゴンの侵略を防ぐ。
僕の花は、踏み越えさせない。

この為の10年……。
二人の王子にできない事。

敵わなくても、立ち向う姿を……。

そのためだけの運命だとしても……。

夕日が背を照らす頃、目の前にドラゴンが獲物を捉えた瞳を、光らせています。
 
東の王子は、知り尽くした地形を最大限利用し、その技量と勇気を絞り出し、一瞬も怯まず、夜が明けるまで、闘い抜きました。

刃こぼれでボロボロの剣を、支えに立ち上がる。
気がつけば、目の前にドラゴンが力尽きていました。

しかし、

崖の奥地から、さらに五体のドラゴンが姿をみせる。

一対一でも、かろうじて退治できたドラゴンが五体……。 

ボロボロの身体は、もう剣を持ち上げる事すらできない。

 これが、自分の命運だと感じた。
だとしても、精一杯の虚勢を……。

 その時、

 怒号を上げて、花路を駆け上がってくる人々。

 二人の王子と百人の戦士たち。
 その誰もが、東の王子と同じ装束をまとっている。

 ドラゴン達は、怯んだ。
 一対一で負けた相手が、五対百……。

 百の戦士の前に、ドラゴン達は退散した。

 人々は、東の王子がドラゴンを退ける姿を目撃した。

 ……。

 西の王子が叫んだ。
「この国を守った男は誰だ!?」

 人々は、彼の名を叫んだ!

 南の王子が叫んだ。
「この国の勇者は誰だ!?」

 人々は、彼の名を叫んだ!
 
 

 アイディアをひたすらに修練し、
 その姿を羨望される者が、
 勇ましき者。

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