『恐ノ竜』

「この街で恐竜の化石が出たらしい」

言われてみれば、むかし大きな川だったらしい。

巨大な渓谷のような地形。

古代なら、恐竜も生活していても不思議はない。

「はやく はやく」

声に急かされて、崖沿いの小路を登っていく。

振り返ると、街が遥か先に見える。

景色がわすっごい綺麗。

「むかし、こんな山沿いに住んでいたよ」

つぶやいてみる。

「昔とは、随分変わったんだ」

「そんな事より、はやく」

「恐竜みたいんだろ?」

やけに急かすな……。

正直、恐竜に心踊るような歳でも、趣味もないんだけど……。

後ろの絶景に気をとられながらも、干上がって鋭い岩肌が無数に突き出た川沿いの崖路をどんどん昇る。

やっと、ひらけた場所に出る。

そこは、さびれた公園。

入り口の両側に、錆びた骨組みが顕になった、セメントの恐竜が出迎えている。

子供でも呼び込みたかったのか、その表面は乱暴な水玉模様に塗り重ねてあった。

その胸元に看板が吊り下げてある。

〔ぅえるか……〕

字がかすれて、ほとんど読めない。

「ウェルカムのこと?」

残念なセンスの連発に、崖を昇った疲れが一気に押し寄せた。

「ホラホラあそこ」

公園の奥に、崖からつきだした部分がある。

そこだけ真新しい白木の鳥居が、質素に佇んでいて、場違いな厳かさを醸し出してる。

景色が見える演出かと、近づいてみたけど、何故か岩に向かって踊場が組んであった。

鳥居の崖を挟んだ、ちょうど正面の岩のにどうやって建てたのか、小さな社が見える。

「ホラホラ下を覗いてごらん」

鳥居から首を付だしのぞくと、

大量の骨が、崖の下に積もっていた。

大きな骨。小さな骨。

「恐竜の骨もあるよ……」

そういえば、この声、どこから聞こえてきてるのかな……。

社に視線を戻すと、その中でギラついた巨大な眼球がこちらを凝視していた。

目があったとたん、社の眼は、あわてて瞼を閉じる。

社のサイズの眼球。

この岩は、巨大な横顔だ。

竜……。

今まで干上がった川だと思っていたものは、竜の身体だ……。

巨大に成長しすぎた竜が、山の地形を崩して横たわっていたんだ……。

何年も、何千年も、何万年も……。

骨は、食事の跡……。

〔ぅえるか……〕

「……飢える神」

瞬間、鳥居が踊場ごと崩れ落ちた。

そして、目が覚めた。

ユメノモノガタリは、更新型ストーリーです。

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